京都の町家をこうてみた。

町家購入にまつわる徒然日記

長屋に決める

後日、すぐにリノベーションについての見積もりの連絡が来ました。
700万くらいあれば中を新築のようにピカピカに出来ます!との事。(別に新築にせんでもええんよ)
そして、この物件なら当社が紹介する銀行の町家ローンを組めますと。

勿論、その連絡が来るまで夫とはずっと家の事を真剣に話し合った結果、「庭があって日当たりの良い駅チカの物件なんて、そうそうないよね。やれるだけやってみようか。」と言うことに。
(前述した通り、ローン組めないことも多々あるそうなので。)

不動産会社がリノベーションの予算を超えたのを気にしてか、「物件価格を900万に出来ないか交渉して来ました!オッケーとのことです!これでリノベーション費用全額予算内に出来ますよ!」と言い、一気に物件購入が現実味を帯びてきました。


たまたまですが、ここ3年以内に家を買った知合いと、町家を買った知合いが計4人くらいおり、相談して短い期間で、全員に家を見せてもらい話を聞いたりもしました。
(これは本当に運が良かったです。特に町家改装についての経験談は知人がいなければ聞けないことだったので、このブログにも細かく記載していく予定。)


探し始めて一ヶ月半しか経っていないのに、とちょっと驚かれるものの、
みんな口を揃えて言うのは、「この家を見たとき、ここだと思った。」と言う言葉でした。

そうよね、そう思って買うものよね。

未だに毎日不動産情報を日に2回チェックしながら(リノベーション工事始まる前日までしていた気がします。)
「でもあの家の方がいい。」
「あの家の方が魅力的。」
という気持ちをなんども感じました。


人生で一番高額の買い物、腹くくるかー。


購入を決める前に、2点だけ不動産会社に条件を付けました。

①購入前ではあるが、業者に入ってもらい、天井裏と床下の状態を見て貰うこと。
(これは町家を買った知人の経験談。床を全部外すと思わぬところに水が溜まっており、柱を換え床下をコンクリート敷にして予算が600万くらい多くかかったそうな…)

②連棟物件の為、隣接している区画全世帯に挨拶に行く事。
壁共有しているのはお隣だけではあるものの、昔は4軒連棟だったようで細い道沿いに家がピッタリとくっついた間口になっています。
小さい子供が越してきてのトラブルはなくはないので、挨拶に行きそれとなく反応をうかがいたいとお願いしました。(勝手に行こうとしたら不動産会社にめちゃくちゃ止められた)


結果、天井は一箇所だけ雨漏りがあるものの、すぐに直せる箇所で基礎に影響はなく、
床下は風通しの良い家なのかスッキリと乾いて状態が良かったそう。

そして、ご近所はご高齢の方が多いものの、空き家は怖いから、若い方が越してこられたら安心ですね。
と仰る方々でした。

これで心配事は一応取り払われました。
本腰入れてリノベーションプラン考えるか!と
間取り図とにらめっこしながら不動産会社と連絡を取りあい、工務店にプランを提案して現地を見てもらったりしました。

これがもう、めちゃくちゃに楽しかった!
壁も床も(歪んでるため)取り払うので、階段の位置以外は大体好きな間取りに出来るのです。

今まで見た近代建築とか内覧した物件とか(特に八清さん※物件探し①参照 は凄く意識しました)とかを見返したり思い出したり、
毎晩、紙にガリガリ図面を書いてはニヤニヤしてたら夫に「楽しそうだね…」って言われました。楽しいよ?



ところがなのです。

不動産会社が自社で使っている工務店に詳しい見積もりを出してもらったら、1200万と出たと。


はいーーーー?!

いやいや、予算の倍!!!!



続きます…。

長屋に出会う

物件探しをしていた中で、第一希望…と密かに思っていた3階建て物件が売れてしまったとの一報が入り、なんとなくションボリしていました。

(この頃には町家とかはもう考えてなかったです。
何しろ条件と予算が合わなさすぎる。)

夫が「広すぎる」と言って保留にしていた物件で、
いいじゃん!広いの!狭すぎるよりさぁ…場所も鴨川近くで気に入ってたのに…とかブツブツ言ってたら、
何か良心が痛んだようで、夜中に「あの近くにこんな物件が出たみたいよ」とメッセージを送ってきました。
(本当に出た直後で、私がそのメッセージ見るまで写真も載っていなかったよう。)

朝起きてそのページを見ると、確かに鴨川近くの築年数不詳の古いお家。
4DKで庭付き、窓からの景観よし。

え!?何これ?なんで値段が1000万切ってるの?

そう、情報欄を見ると、お寺の借地だったのです。

「ええやん!!!」
(これ進○ゼミでやった問題だー!!!)※物件探し①参照
となった私は早速その場で不動産会社に連絡。

丁度次の日が夫のお休みだったので、内覧の予約をとりました。(一番初めの内覧者だったみたいです)


行ってみると確かに古くて、ずっと誰も住んでいない事がわかるような長屋。
でも凄く感じが良いのです。

カーテンを開けると電気がついていないのに割合明るく、柱や床が斜めになりまくっているけれども外観は直さなくてもいいくらいスッキリした印象。
小さな庭は、公園に面していて建物が立つ予定はほぼなし。
そして2階の大きな窓からの景色。

あ、ここだわ、と思いました。
ここなら理想的に直して、暮らせそう。

私は夫を置き去りに(笑)不動産会社の人に、前向きに検討するので、内装を「全部屋平衡をとって、フローリングにする。水回りを一新する」くらいのリノベーションをするのにどのくらいの金額が掛かるか計算して連絡もらえませんか?と聞きました。
(その不動産会社はたまたまリノベーションもやっているところでした)
ちなみに予算は物件価格の6割くらいで。

担当の方は私の前のめりの姿勢に「いける!」と踏んだのか、物件を押さえる方向ですぐに見積もりを出すと言ってくれました。

さて、このブログでは値段をちゃんと載せますね。

●物件価格 990万円

安い!と私は思ったものの、土地なしで古い家屋のみなので相応だと言われました。(安くも高くもない、と。正直な人やね。)
でも、鴨川は近いので引く手は数多かな、とも。

●借地料 月8000円

これは安い!というか、借地料は家屋の価値に対して付いているので、新築なら上がるそうです。
(ただ、京都の大きな寺の借地なら月5〜10万という価格もザラにあるらしい。)

土地を買わなくても、100年住んでも1000万しないなら良いんじゃない?
この辺の土地なら2〜3000万するから、その分子供の学費と自分たちの老後の貯蓄も出来るし。

●リノベーションの予算 600万前後

これはざっくり、物件の6割くらいかなぁというイメージ。特に明確な基準なし。


気になる点は

○借地かつ再建築不可

つまり、建物がなんらかの事情で使えなくなったら立ち退く他ない。

○連棟物件

連棟とは、隣の家と壁を共有している家。
テラスハウスとも表記します。
この家は2連棟で片側だけ共有の壁。

お隣さんとの関係性が重要になりそうだけれど、家の目の前公園なら、子供の声が煩いって怒る人は住んでないんじゃないかなぁ…(希望的観測だけど)

○築年数不詳

不詳、記録が残っていないくらい古い。
でも京都にはそう言う家っていっぱいあるし、ちょこちょこ改築があったのか、窓のサッシや水回りは最近のものになっている。

あとは、鴨川から本当に近いので、水害は大丈夫かなともちょっと思うけれど、
水害マップでは、警戒地域ではないのを信じるしかない。

迷いながらも、「探してたのはここなんじゃないか?」と言う言葉が頭の中をぐるぐる回っていました。

物件探し②

初っ端から美しいリノベーション町家を内覧してしまった私達。

もともと不動産情報というか、間取り図を見るのが大好きだったので、その日から日に舐めるように不動産情報のページを見て回り、
見尽くしたと思ってからは日に2回、更新がないか巡回しました。

条件は

○リノベーション費用含めて3000万円以下。

○(車がないので)駅近く、実家からもほどほどに近く。
 
○猫がいるので一軒家、2LDK以上。

○周辺の環境がよく、出来ればお庭があること


私達が今まで家を移る際、あまり意見がすれ違わなかったのは、多分二人とも景色が良い家というところに重きを置いていたように思います。

猫も家の中で一生を過ごす事になるのだから、せめて窓の外の景色を楽しめるようにという思いもありました。
(名前を見てわかるように、猫キチです。)

あと、野外でご飯を食べるのがめちゃくちゃに好きなので、ちょっとしたお庭と言うか、子供のプールくらい出せる土地があったら嬉しい!ここも意見が一致しました。

が、

駅チカで庭付きは難しい…!!!

「庭」にチェック入れた瞬間に、検索のヒット数がググーーーっと一桁代まで減るのです!
(まぁ、予算のせいもありますが)

勿論、検索ワードに庭がなくても、ちょっとしたスペースがある場合もあるので地道に探して、
実際に何件かは内覧に行ったのですが、

道路や隣の家のベランダに面していたり、奥まったトタン屋根の下の小さな洗濯場であったり、思い描いていた感じではない…。



そもそも、町家あんまりなくない??



いや、あるにはあるんですが、高いんです。

その…あんまり大声では言えないけど、コロナ禍で民泊手放したい人が二束三文でサッサと売り払ったりしないかなーなんてちょっと期待してたところも…


内覧回ってた時に、それとなく営業の方に聞いたら
「コロナ禍で家(お家時間とか現物資産)に対する需要が高まってきていて、手放す人は割合少ないですね。
そして、京都のブランドは未だに強く、良い場所はそんなに値崩れしません。」

との事。

そうよねー…ちょっと期待しすぎたわ。

でも時間かけて探すなら色々見て回ってて悪いことないよね。
どんな良い出会いが転がってても、チェックしないと見逃しちゃうからね。

とか言いながらもガッカリです。

お家買った知合いも3年くらいは探したよーとの事だったので、そんなすぐ決まる方が怖いか…と思っていた矢先。


今の家との出会いがありました。


なんと探し始めて1ヶ月半のことでした(笑)

物件探し①

2020年下旬、私達は物件探しをはじめました。

このタイミングで物件探しを始めた理由は、
何年間か掛かる事を想定して、子供が小学校に上がるまでに決めたいと思った為、

そして、コロナで日本から撤退する海外の不動産所有者が、町家や古民家物件を手放すのでは無いか、という推測の元でした。


私はもともと建物を見るのが大好きなので、独身の頃は友達とよく近代建築巡りに出掛けていたのですが、

そんな中で見付けた推しのリノベーション会社
それは八清さん https://www.hachise.jp/
こちらの大正ロマンの家と言うシリーズの頃からかな?
住むならここでお家を買いたいと思っていたのです。

丁度、前記事の一週間後くらいかな?
八清が北野白梅町に2軒並びのオープンハウスを行うとの事だったので、夫を誘って見に行きました。
(その物件のページはもう見られないようです)

すごく綺麗な漆喰塗りのお家が並んでおり、裏にはこじんまりとしたお庭まであります。
八清さんらしく、木のぬくもりを感じる内装と最新式のお風呂とトイレ、床暖房まで入っています。
お値段が一軒3000万円くらいで、「え…これは買えるのでは?」という価格に心がときめきました。

担当の方が本当に建物に熱心な建築士さんで、(営業に熱心なのではないのです、建物愛が凄いのです。)
「ここはなぐりの木を入れてね、サビ丸太も綺麗なんです。天井には桜の木がね…」とこちらが嬉しくなるような案内でした。

そこで衝撃の事実。

●値段帯が安いのは建物だけの価格で、こちらはお寺の借地である。京都は寺の借地が多く、値段は月々ピンキリである。(ちなみにここは月6000円!安い…)

●町家や古民家に土地がない場合は、担保がないので(実質建物の価値はないという計算になる)ローンが組めないこともある。
実際、この2軒のうち1軒は売れていて、その方はキャッシュで(!)買われた。

土地がないの?キャッシュ?
不動産初心者の私達はビックリしてしまいました。

良い点としては、

○土地がないので固定資産税が建物のみしか発生せず、建物もリノベーション(中古)なので安い場合が多い。

○借地とはいえ、寺が主体だと実質、借り主に退去の必要がない。

良い点があるにしても、土地がなくてローンが組めないかもしれない…
夫は「ここまで綺麗に手を入れてあるなら、自分で買って直すよりも面倒がなくていい」と前向きではありましたが、
北野白梅町は住んだことのない土地だった為、とにかく保留(と言う名の断念)と言うことになったのでした。

まぁ、初めての内覧でしたしね。
あと、この物件くらい気に入るところを!という事ハードルが持てたのは良かった気がします。

物件探し続きます。

家購入の切っ掛けの話。

新居購入って人によって色々な切っ掛けがありますよね。
結婚・出産・転居なんかが多いのかなぁと思います。

私も子供が生まれて、まぁ手を離してても危なげなく歩けるようになって来た頃合い、何となく家のことも考えてはいたのですが、
呼べば人が駆け付けて直してくれる賃貸万歳!とか思ってました。

ところがところが、
そんな怠惰な私の新居購入のきっかけは、旅行でした。


コロナ禍で、生まれた子供を遠方の祖母に一度も見せずになかなかに大きくなってしまい、祖母の90歳のお祝いも出来ずに切なく思っていた頃。

Go to トラベルで少し良いお宿に安くで泊まったというインタビューをTVで見ていた夫がふと
「お婆ちゃんに会いに行けるんじゃない?」と言うのです。

実はこの一年ほど前、母が病気をして容姿にも影響があり、それがようやく気にならないくらい回復してきた頃でした。

じゃあ家族旅行するか!と電光石火の速さで祖母の家から出来るだけアクセスの良い、少し良いお宿を母も含めて予約しました。
(結局なんやかんやで8割引くらいで泊まれました。それくらいでないと二度と泊まれないお宿です。笑)


それがまーーー。


いい。


畳に床の間に木の匂い。
障子越しの柔らかな朝の光。
窓を開けたら、川のせせらぎと松の木。

祖母と会えたことが勿論、一番嬉しかったですが、
旅館で広いお布団で横になりながら(子供がぐるぐる寝ながら移動しても蹴られないくらい)
夫に「ここに住みたい。」と真顔で言いました(笑)

動機はそんな感じではありますが、よくよく考えてみると、

賃貸に住みながら家賃と生活費を払い、
学費を貯め、子供が独立して退職し、
年金暮らしになった時に、手元に家だけでも残れば安心じゃないか?
というか、このまま賃貸だと学費が充分貯められないんじゃないか?(京都は私大の宝庫です…)

という普通の親の悩みどころをようやく直視し、お恥ずかしながらやっと真面目に考え始めた訳です。

次回は物件探し!

はじめましてのご挨拶

初めまして、猫田です。

最近は町家や古民家をいい感じに改装して暮らすスタイルがテレビや雑誌で紹介されたりしていますよね。

私は「素敵だなぁ」とは思っても、人生にそんな予定は特にありませんでした。
(実は洋館の方が好きでした、ヴォーリズとか。)


ところが、子供が少しずつ大きくなっていく中、家を持つと言う事を考えた時、
漠然と町家を選ぶのも良いんじゃないかなぁと思ったのです。

それは、当時借りていた一軒家が町家の多い地区にあったからかもしれません。

私はご近所付き合いがわりあい好きで、子供もご近所のお婆ちゃん達に可愛がって貰っていました。


小さなお庭と丸い玄関灯、風抜けの良いお家と日が差し込む縁側。


そこまでは贅沢だとしても、京都に住んでいるなら探せば町家はあるのでは?

新築を買う余裕はないけれど、中古の家を買うならちょっと面白いところに住んでみたいな。

そんな気持ちで不動産を見始めたのです。

なるほど、京都の土地柄、町家や古民家の出物はチラホラあります。

が、


これ直すのに幾らくらいかかるの…?

町家って何か特殊な事情はあるの…?

連棟って何?
コストランニングは?
瓦屋根ってメンテナンスとかいるの?


特にお金関係が全然見えて来ないのです!!!


これは困りました。

なので、このブログではキチンと金額を入れてお伝えしようと思います。

具体的には

○購入について(借り入れ)
○修繕について(リノベーション)
○暮らしぶりについて(コストランニング)

最近引っ越したところなので、コストランニングは住みながらの更新になります。(特に底冷えが厳しい京都…冬がどうなることやら。)

勿論、一例に過ぎませんが、町家暮らしを考えている方の選択肢になればなぁと思います。
宜しくお付き合い下さい。

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結びに、ほんまに気持ちよく暮らしてます。
最高やわ、町家って!